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「無一文で観光旅行!? 稀に見ぬ大間抜けだな!!」
とある三ツ星料理店で思い切り笑われる社長。一見礼儀を知っていそうな男が行う言動には、似つかわしく無い情景だ。
「笑わないでよ。僕だってしたくてした訳じゃ……」
「貴公は面白いな、気に入った!」
何でも頼めと太っ腹な事を言う彼は、やはり良い所の貴族なのだろう。
「私は“ルイ”と申す。貴公は?」
「僕は“ダイス”。宜しくね」
軽く自己紹介を終えた二人は、運ばれて来た料理をゆっくりと食し始める。
「本当、助かるよ。餓死でもしたらどうしようかと思ってたんだ」
「ははっ、無計画にも程があるな! 所でダイスよ、貴公は異国の者か?」
「うん。もっと北の国から来たんだ」
正確には連れて来らされたダイスだが、文句を言おうにも応答は無く、もしや此の現実離れした現状は夢ではないかと思ってしまう。
「北? 西の島国かと思っていたが……」
「帽子の事? 確かに此れ、其処の国発祥だけど……」
「まぁいい、貴公は今日私の家に泊まれ!」
「命令形?」
食事を済ませたや否や、ルイはダイスを引っ張って自宅へ招くと良い始めた。
「北の異人は珍しいからな、父上も喜ぶ事だろう!」
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