1544人が本棚に入れています
本棚に追加
唐突に、胸ぐらを掴まれるダイス。
「……どうしてくれる」
暗く低く、震える声でルイは言う。
「何だ此の苦しみは! 遠くで恋い焦がれていた以前の方が、余程マシではないか!! 何が思い出だ、何が……!」
「八つ当たりかい?」
そう言われ、ルイはダイスを離すと小さく謝罪の声を漏らした。
「あぁ、そうだ。八つ当たりだ。そうでもしなければ、気が狂いそうだ……」
「似た者同士だねぇ君達。二人して勘違いしてるだなんて、やっぱり御似合いだ」
怒りで赤く染まったルイの顔。其の顔に、ダイスは軽くデコピンを喰らわした。
「なっ、何をするダイス!」
「だって、僕は君を幸せにするなんて一言も言って無い」
「……!?」
「僕は思い出を創るのを手伝った、其れだけだよ。あのさ、思い出って言うのは“残す物”だ。継続される物じゃ無い。其れの所為で後々苦しもうが関係無い、寧ろ其れはより思い出が強く残っている証拠」
いつになく淡々と語るダイス。胸ぐらを掴むルイの手の力は、いつしか緩んでいた。
「楽しかったろう?」
「え、」
「楽しかった、ろう?」
そうだ。ルイは楽しかった。ソフィーと共に過ごせてとても楽しかった。
「君は其れ以上、何を望むと言うんだい」
最初のコメントを投稿しよう!