1544人が本棚に入れています
本棚に追加
其の流れに歯止めが掛かった事は無く。
(何でこうなったんだっけ)
気が付けば一人。其の流れの始まりを忘れた彼は、訳も判らず一人遊びを繰り返す。
そして人知れず近付く黒い影に気付かぬまま、彼は眠りについた。
雪の積もる帰り道、友人と雪を投げ合って歩く。冷たい雪も其の時は何処か温かで、笑いながら遊んだ帰り道。
確か自分がまだ十四歳くらいの頃。
そして自分は家に帰った。他人に近い親戚の家。雪で汚れた自分は、其の日家に入る事は出来なかった。
次の日には風邪をひいた。親戚は勿論、友人にも移す訳もいかず、自分から周りを避けた。
雪遊びは、もう出来ない。
「…………」
仏頂面で起きた社長。しかし夢と認識した途端、其れは過去の事と切り替えた。
そして時計を見ると、帰宅時から一時間しか経っていない事が判る。
(……映画でも見よ)
二度寝する気分にもなれず、社長は前に買った映画のDVDをテレビに差し込む。
(そう言えば昔、友達と見ようとした時あったな。何で見れ『うるさいぞクソガキ! 勝手にテレビを使うな!!』
思考する最中画面に映ったのは、見れなくなった原因である太った男の親戚、の顔。そして何故か勝手にDVDが出てきて、其の場で砕け散った。
現実には有り得ない現象に社長は深い溜め息をすると、此れも夢かと呟く。
(夢でも気分悪い。早く覚めないかな)
そう思っていると、着信音で目が覚めた。ケータイを開き耳に当てると、怒鳴り声が鼓膜を貫く。
『今何時だと思ってるの!? 早く帰って家事をてつ……!!』
聞き終わる前に、社長はケータイを電源ごと切った。
最初のコメントを投稿しよう!