妄想

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「はい。これ飲んで」  美弥に紙パックの牛乳を渡された。  震える手でそれを受け取り、口へと運ぶ。  ごくり。  一気に飲み干した。 「落ち着いた?」 「ああ」  不思議と気分が楽になった。いや、視界がまともになったと言った方がいいだろう。  先ほどまでスケイルは、周囲が血塗られて見えていた。美弥を見た時は、真っ赤に染まった巨大なアリに見えてしまった。  なぜあんなふうに見えてしまったのか、それは分からないが、とにかく気持ちのいいものではなかった。 「美弥……。済まなかった」  頭を下げて謝る。謝って済むかどうかは分からないが。 「いいよ。なんとなく、分かるから」  これはどういう意味だろうか……。彼女にもこんなことがあったのだろうか……。 「今日は疲れたでしょ?もう寝ようか」  美弥に慰められ、少し情けない気持ちはあったが、確かに疲れた。肉体的疲労はそれほどないが……。  ぐきっ!  けのびをしたら肩がつった。どうやら肉体的にも精神的にも疲れているようだ。今日は休もう。
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