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中は意外に広く、潜水艦に似たような構造になっていた。見たところ、かなり頑丈に出来てあるようだ。
「そういえば君、名前は?」
少女が訊ねてくる。妙ににこにこしていて、何が楽しいのか分からない。
「ああ、そう言えばまだだったね。さっきはありがとう。俺はスケイル、よろしく」
名乗った後、握手を求め、手を差し出した。
「よろしくね。あたしは菊地美弥(きくちみや)。よろしくね」
笑顔で挨拶をしてくれる。握られた手は暖かく、彼女は人間であると分かった。
「ところで、さっきのやつは?」
先ほど黒タイツの男を倒したあの黒い影。あれが気になって仕方がない。
「ああ、あれはデブりって言ってね、天津人(あまつひと)の残骸から取ったものを改造した兵器なの。でも解明されてない部分が多いから、実験として一人一つしか使えなくてね」
スケイルは一瞬ドキリとした。
天津人。数年前、突如飛来した隕石より現れた異邦人。鋼鉄の身体と、水銀のような体液を持ち、地球人を遥かに上回る文明と技術を持つ民族。その機械的な身体ゆえに、その一部を兵器に使用するとは思わなかった。
震えが止まらない。なぜならそれは、スケイルの出生にも関わることなのだが、彼は天津人と大いに関係があるからだ。
「ところで、なんでここに来たの?」
その質問、待っていました。これに答えられなければ話が始まらない。
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