1色目・私のパレット

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「よし、決めた!」 「何をです?」 何かを思い付いた先生に、私は尋ねる。 すると、清々しいくらいの笑顔になった先生が腕を組んで告げた。 「みゃーこはしばらく美術室に立ち入り禁止!」 「は?」 おそらく、誰が聞いても教師に対する生徒の返事とは思えない声が、自然と私の口から溢れる。 「あ、もちろん放課後だけね?公認で授業サボれてラッキー♪とか思っちゃダメよ?」 「いやいや、そうじゃなくて!意味が解んないですって!」 「こんなとこに籠ってるから、構想もまとまらないんだよ。だ・か・ら、ガッツリと気分転換して貰おうかと先生は思ったわけよ♪」 褒めて褒めて~と、言わんばかりにニコニコしながら話す先生。 「いや、そうじゃなくて。部活はどうするんですか!」 「いいんじゃない?この時期は、基本的に自由参加だし。それに、他の子も自宅作業してるだろうし。今だって、居るのは私らだけっしょ?だから、問題ないって。」 「でも─────」 反論しようとする私の肩を掴み。 回れ右をさせた先生が、私の背中を押して強引に歩かせる。 「はい決めた!先生が決めました!決めたら即実践!・・・あ、これ先生の座右の銘ね?」 私のことなどお構い無しに、先生は私と荷物を廊下へ放り出した。 「ちょっと、先生────」 「じゃ、頑張って気分転換するんだよ?」 ガラガラガラ─────バタン! ガチャッ! 先生が笑顔でドアを閉めると、中から鍵を掛けてしまう。 しばらく呆然としていた私だったが、とりあえず下駄箱へ向かうしか思い付かなかった。 って言うか・・・気分転換って、頑張るものじゃないよね? 先生の無茶な言い分も、私を思って言ってくれたのだと思うと流石に無視は出来ない。 それに、閉じ籠ってばかりじゃ良くないのも、私自身感じていた事でもあった。
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