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夜間保育園から、平岸幼稚園へ入園となった。
蘭は、はと組。
麗は、ゆり組。
“そこの園長先生は、とっても良い先生だったな。
蘭の病気関係なく、受け入れてくれたんだ”
嬉しそうに母はそう語った。
“幼稚園へと置いて行く時も、保育園へと置いて行く時も……麗は真っ直ぐ中に入って行くんだけど、蘭だけは入って行かなかったんだよ。
涙は見せなかったんだけど、今にも泣きそうな顔をして、“ママ~蘭(なぁん)を置いて行かないで……”って言った時は、辛かったんだよ”
双子を養うのは大変。
2人同時に、それ相応のお金も2倍。
まして、私はレックリングハウゼン症という難病を患っていて、
1回の受診や入院ともなれば、当然保険には入れない。
母も父も共働きしなければ、生きていけなかった。
私は、それを知るのは先の話。
私が5歳の時、嫌な事があった。
お遊戯で皆がボールで、
遊んでいるのを見ている時があった。
自分はいつも2階から眺めて見ていた。
私は母に聞いた。
「ママぁ、どうして蘭は麗みたいにボールで遊んじゃあダメなの?」
いつか……こんな事を聞かれる日が来るとは思って居たけど、まさかこんな早く来るなんて……と。
隠せる分けない。
「蘭ちゃんは、麗ちゃんとは違って健康な体じゃないの。
病気で生まれて来ちゃったのね」
「蘭、悪い子だから?
神様がビョーキつけたの?」
「神様が、蘭なら病気に負けない強い子になるからってつけたの」
左の頭を撫ぜて。
「ここね……ボールでも物でも少しでもぶつけたら、蘭ちゃん死んじゃうの。
痛い痛いなの」
その時初めて……私は麗ちゃんと違うと思った。
好奇心旺盛な私の行動に両親はいつもハラハラしていた。
体調を崩すものの、
痛みを訴える事はなかった。
幼稚園で私は初恋した。
たくさん話をしてくれて、遊んでくれた男の子が大好きだった。
幼稚園から小学校へ……
私は典子先生に蘭が通う学校名を教えてもらった。
「蘭ちゃんが通う小学校の名前は?」
「ひ。ひ……」
東山(ひがしやま)小学校……そう言いたくっても言葉が出なかった。
今思えば、東山小学校の“がし”と言う発音が苦手だったんだと思う。
「東山小学校」
「ひがしやま小学校」
「よく言えたわね」
卒園を迎え、小学校へと上がった。
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