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看護師さんはバタバタと急いで、私の過去のMRIの写真を持ってきた。
「澤村先生、蘭さんの過去のファイルを持ってきました」
「有難う。
本来なら10年以上のMRIの写真は破棄しなくてはならないんだけど、ちゃんと残ってあるんだ」
と、澤村先生が言った時に写真を持ってきた看護師さんが……
「形成外科の前・大浦教授の意向でとっておいたそうです」
「そうなの?
感謝だねぇ」
そう言って過去のMRIの写真を診ていた。
「北大では最後に撮ったのは10歳ですね。
後は、メモリアル病院で撮ったのが最後か……
この時にも腫瘍がないとすると、いつ出来たものなのか……
今は形成外科だけですよね?」
私はうなづく。
「今の段階では、悪性か良性なのかハッキリわからないですね」
父が……
「これは取れないんですか?」
「場所が場所なので、難しいですね。
写真で診たら、僕も簡単そうでやれそうに思うんですが、蘭さんの場合、手術して開けて診みないと分らないからね。
脳はほんと繊細で、いざ開けて診たら違っていたってことになりかねますからね。
急激に出来たものなのかは分りませんが、次のMRIを受けて大きくなるようでしたら、緊急入院してもらい手術を行うしかありません。
形成外科の方はしばらく通うのを中断して、脳神経外科(こちら)を最優先して下さい」
「はい」
私は形成外科よりも脳神経外科を優先になった。
「次の検査は3ヵ月にしましょう。
雄武から通うのは大変なのは分かりますが、蘭さんの経過を診てそのくらいが良いかと」
診察を終え、雄武へと帰路した。
両親は私の脳腫瘍の事は話をしなかった。
自分は、一つの病気に後どのくらい新しい病気が増えるんだろうか……
そんな事をただ考えていた。
逃げ出せたらどんなに楽なんだろう?
蘭みたいな病気を患っている人は、どうやってやってるのかな?
体は健康そのものなのに……首から上は病気だなんて
ただそんなマイナスな事を考えていた。
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