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「医師…蘭やばいかも」
「大丈夫だよ~」
「だって、ほら婆ちゃん迎えにきたもん」
「そりゃあ気のせいだ(笑)」
「あれ?
セキ婆ちゃんじゃない……ママのお母さんだ。
おいでって」
「行くんじゃないよ~(笑)」
まあ、とんちんかんな事をなしていったかは未だに分らない。
笑いながらメスを握る医師も余裕なんだと感じた。
1時間にもよる手術は成功した。
左目を洗浄し、鏡で自分の顔を見た。
血はすでに止まっているので、薄くガーゼをあてるだけになった。
両目が均等に開いたまま、手術室を見渡す。
それは私にとって新鮮そのものだった。
医師は“筋膜が弱ったら、元の姿になったら手術しないといけないよ”と、言われた。
手術台から下りて、自分の足で歩こうとした途端、その場に崩れ座り込んでしまった。
山本医師や担当看護士も焦って私の元へと駆け付けた。
左目が今まで閉じたままの状態で何十年も生活に慣れてしまったせいで、視界が二重、三重にぼやけて、入口である扉視点が合わなかった。
1人で歩くのは、困難だった為、酔っ払いのおじさんが抱えらるかのように病室へと戻った。
幸い、トイレはすぐ迎えだったから、壁にそっと歩き、トイレへ直行。
当時の北大は、禁煙ではなかったけど、携帯の使用は禁止されていたから、入院患者は隠れて使用していた。
トイレで、出来たてほやほやの顔を一枚写して、母達に送信。
画像を見た母や麗は喜んでくれた。
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