-手術-

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「ママ……パパ……」 麗の姿が見えなかった。 「蘭……お利口さんだね。 よく手術に耐えたね」 「麗は……麗はどこ……?」 「麗はうちにいるよ。 もう暗いし、明日は学校だからね」 母はそういって嘘を付いていた。 病室内は、閉めきっていて朝も夜も分からないし、曜日や日にち時間も分からなかった。 麗から聞けば、蘭が手術になったら、麗は入れない。 いつも入口で待っていた……と言っていた。 外や病院内からの菌を出来るだけここには入れないようにしているからだ。 体力的にも限界、免疫力低下、風邪なんか引いたら、合併症になりかねない。 私は嘔吐した。 麻酔の薬が、同時の私にすれば強過ぎた。 痰が喉に絡まっているかの様な違和感……気持ち悪くって……頭痛くて顔全部が痛くて必死で言葉をだして。 「ママ…パパ……蘭早く……お家に…帰りたいよぉ」 痛みからの恐怖……自分はまたママ達に置いて行かれるのではと言う恐怖に怯えた。 小さい時…… いつもママが仕事へと去って行く背中を見ていた。 母はいつも愚痴癖かの様に…… “蘭はお利口さんだから、待ってるんだよ。 お利口さんだったらママ早く帰るから”と…… 「蘭がお利口さんにいて、医師の言う事を聞いてれば早く退院できるからね。 少しの間、ママ蘭と一緒だからね」 笑う母。 こういう時ではないと、ママに甘えれない。 2週間ICUの中、やっと機械から開放された。 でも点滴だけはとれなかった。 首の近くと、左腕、右の甲、左足の付け根に点滴…… 4ヵ所に違う薬……「蘭はお姉ちゃんなのに、甘え子さんね」 母と私が一緒に病院への泊まりにはハプニングがあった事を覚えている。
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