-リストカット-

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夕方になったら、担任が家へときた。 当然母は追い返していた。 「てめぇの顔なんか見たくねぇんだよ!!失せろコラよ! 何食わぬ面(つら)で気安く人の娘の心配してんじゃあねよ」 紋別地区で、元・ヤンキーで、元・2代目総長…言葉が荒い。 この時自分はそう思った。 皆が学校行っている間に、外に出て散歩していた… 妊娠していたワンちゃんが心配だった。 しばらくいってなかったからだった。 見に行くと、子犬が生まれていた。 目も開いていないく、小さな命だった。 5匹の中で一番小さいの1匹が匂いを辿って蘭とこにきた。 「ワンちゃん、ママとこに行きなさいね」 といっても、戻しても戻しても、自分の所へときた。 抱っこすると、リストカットした右手首の傷跡を舐めていた。 「ワンちゃん! 蘭の所に来ても何も出来ないよ?病気うつるんだよ!! 兄妹に嫌われちゃうんだよ!!」 と、言ってもクゥーンクゥーンと鼻を鳴らしていた。 うちの帰ろうと歩いていると、目開いていないのに、匂いを辿って着いて来た。 その子犬を抱っこして、飼主さんとこにいった。 飼主さんは、母の知り合いだった。 あったことを話すると… 「このチビちゃん、蘭ちゃんをママと思ってるんだよ?」 「ママ?」 「このチビちゃんね…兄弟の中で一番小さい子でお母さんのお乳を飲まないの」 話を聞いていたら、この子だけ、里親がいないから目が開く前に、保健所に連れて行くと聞いた。 保健所…テレビで見た事がある…死んじゃうんだ。 「(せっかく、生まれて来たのに殺しちゃうの?おじちゃん!!少しこの子連れて行っても良い?ママに頼んでみる」 連れて行きママに頼んだ。 ちゃんと面倒をみると、 でも親側にすれば“うん”とは言わなかった… 命を飼うという事は、どれだけ大変なのか…その命があるかぎり最後まで面倒を看なければならない。 かよちゃんはそう教えてくれたが、 「蘭ならやれるかもね。どんな事でも最後まで面倒みるんだよ?途中で投げ出したら絶対に許さないからね!!」 「うん約束する」 子犬の名前は家族会議で“ムック”と命名した。 ムックとの出会いが、自分がこの先の将来、介護士となる道となった理由の一つへとなった。 でもそれが分かるのは12年後、先の話だった。
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