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何度も、何度も。聴いては戻し、聴いては戻し。
年代物のラジカセは、今日も頑張って僕に曲を聴かせてくれる。
―――なにゆえに、なにゆえに―――
彼女の澄んだ声は、いつだって僕の心の曇りを晴らしてくれる。
―――ひとしずくの涙は渇いたアスファルトに呑み込まれた―――
「またテープ聴いてるの? いつの時代のヒトだよまったく」
同居している弥生は、呆れた様子で僕を見る。いいじゃないか、好きなんだから。だがそれはなかなか言えなくて、悔しいだけ。
―――所詮未完成の人生なら、ありったけの力で壊してしまえばいい―――
「早く寝なよ、明日も朝から仕事でしょ。私は先に寝るからね、おやすみー」
おやすみ弥生。また明日。
僕もこれをあと3回ほど聴いたら寝るとしよう。
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