擦り切れるテープ

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 ベッドからゆっくり起き上がる。既に部屋のカーテンは開かれていて、心地よい陽射しが床を温めていた。  「行ってらっしゃい」  弥生に声をかけられ、行ってきます、と手を振る。家を出る。さぁ今日も張り切って仕事をしなければ。  上司に挨拶をし、今日の任務をインプットし、再び外へ出る。戦うサラリーマン。僕は弥生を守るために働く。  仕事を終えて帰宅すると、弥生は家に居なかった。僕は古びたラジカセを押し入れから取り出し、テープを再生した。  ―――所詮未完成の人生なら、ありったけの力で壊してしまえばいい―――  8回目が終わって巻き戻していると、弥生が帰ってきた。  「相変わらず好きだねぇ、それ」  僕がこれを日課にしているということは、必然的に弥生も毎日聴いているということだ。不満を言わないところを見ると、嫌ではないらしい。実際はどうなのかは不明だが。  「あれ、ところどころ雑音まじってない?」  うむ、確かにびりびりしている箇所は複数ある。それすら聴き慣れてしまっていて、気に留めていなかったが。  「きっとテープが擦り切れてるんだよ、聴き過ぎなんだなー」  何十回、何百回再生しているんだ、そりゃぁ擦り切れたりするよな。僕は弥生を見つめた。  「……わかったよ、また録ってあげるから」
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