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―――なにゆえに、なにゆえに―――
―――ひとしずくの涙は渇いたアスファルトに呑み込まれた―――
―――所詮未完成の人生なら、ありったけの力で壊してしまえばいい―――
弥生が歌う。僕のために。実を言うと、この瞬間が一番の楽しみだったりするのだ。
より透明さを増した彼女の声は、何の弊害もなく僕の心に沁みわたる。
「ほら、もう遅いから、今日は寝なよ。明日またテープで聴けるんだから」
名残惜しいが仕方ない。僕の充電もそろそろ限界だった。
「おやすみ」
僕は充電カプセルに入り、踏み台に両足を乗せる。金属だがさして重くない身体が、ロックされた。
スイッチを入れると、エネルギーが満ちるのをふわっと実感すると同時に、力が抜けていく。
おやすみ弥生。また明日。
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