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例えどのような相手であれ、敵は敵なのだ。
殺(や)るか殺(や)られるかの狭間の世界では、運も奇跡もない。
全力と実力を出し切った者こそが、この大地に立ち続けられる唯一の方法だ。
戦闘下において当然の真理を、改めて痛感させられた恩を感じつつ、クロノは声を盛大にして夜空へ吠えた。
「リンッ! 『アレ』を使う!」
相手の脳に直接伝達を可能にするのにも《タンヘリム》の消費は必要となる。
が、口から発する言葉では、時には敵に情報を与える凡愚の行為となってしまう。
今回のクロノの発言は、敵に何かしらの策を用いて攻撃に転ずると宣言しているようなもので、エレン自身もより深い警戒心を働かせる結果となった。
が、それはクロノなりの宣戦布告にして、味方(リン)さえ恐怖に震撼させる咆哮であった。
リンの《タンヘリム》が、ドクンと危険信号の鼓動を打つ。
危険個所は大地の上――極限にまで活性化されたクロノの荒れ狂う《タンヘリム》に、彼女の《タンヘリム》が共鳴し恐怖に逃げろと叫ぶ。
脳裏に過る地獄絵図を思い出したリンは、これから始まる天災から逃れるべく即座に遥か上空へ緑光の翼を羽ばたかせた。
「――これは主に、大軍を相手にする際に使用する技なんだけどな」
おもむろに地面へ突き刺した《インフェルノ》を、片手で更に深々とめり込ませていきながら、クロノは平坦な口調で言った。
「だが、お前は別だ。この技を〝受けるに足りる〟」
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