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が、そう宣言されたものの、エレンが気掛かりになる異変は見受けられない。
遥か上空へ避難したリンの姿は、もはや人間の目視で認識出来る範囲を超えていた。
煌めく無数の星々のいずれかがリン・ノークスタンの一つの光なのだろうが、常に目標にされているエレンにとってはどこから砲火されるか見当も付かぬ為、これはこれで脅威の対象となった。
燃え盛る炎と立ち込める黒煙は徐々に夜空を浸食していく。
黒煙そのものがエレンの姿を隠してくれる利点がある――そう、考えていた時、
視界が揺らいだ。
それは大地そのものの震動だった。
戦闘中にタイミングが悪い……しかし、自然現象では仕方ないと思い込みそうだが、この《ロストヘブン》で地震などあり得ない。
「――ッ!!?」
突如発生した異常現象に思考が掻き乱されたエレンだったが、遂に姿を現した超常現象を目の当たりに、状況整理が追い付けず真っ白となった思考は、完全に停止を余儀なくされたものだった。
――ドォオオォンッ……身近ではないどこか遠くでの爆音。
それも小規模ではなく予期せぬ山の大噴火に出くわした衝撃と震撼に、エレンは身を竦めた。
爆音の発信源はエレンの遥か後方。
振り向きざまと同時に襲い掛かる灼熱の旋風に晒された彼女は、焼け付きそうな両目を咄嗟に左手で庇った。
何が起こっているのか、その遥か先に広がる光景を確認する為、指の隙間から見据えようとした。
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