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恐らく、次の返答次第によってエレンの生死が確定する。
残された炎は窮地に追い込まれたエレンに対する情けによるものではなく、降伏を拒否した時、彼女の炎はクロノに操られ、自身を燃やす為の攻撃手段となるのだ。
こうなる事を想定していたからこそ、早急に決着を付けなければならなかったのだが……。
「寝言は寝てから言え、ボケナス」
馬鹿にするように、事実、エレンはクロノを低能と見下して嘲笑うかのように侮蔑した。
エレンが持つ炎剣の主導権がクロノに移り替わる。
刹那に膨大な炎へと変化し、瞬く間にエレンの身体に纏わり憑くと、骨の髄まで焼き尽くさんばかりに燃え上がった。
忽ち全身に渦巻いた炎はエレンの生命活動を破壊し尽くしていき……ゆらり、と身体が揺らめいたのを最後。
立つ力を失った膝が最初に地面へ着き、そして全身を大地に預けるようにして朽ちて逝く。
中々に興味深かった相手なだけに、殺すには惜しい存在であったと、クロノは悲壮を浮かばせた。
しかし、死を選んだのは彼女自身だった故、引き留める道理も情けも彼にはない。
肉と骨を灰と化すまで燃え続ける炎を見定めてから、クロノは踵を返すよう背を向け歩き出した。
今後、何十年とつまらなく続く拷問のような人生の中で、あのような変わり者と似た存在と出遭えるのか――そう、やるせない気持ちを抱きつつ《インフェルノ》を解除しようとした時、
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