『戦火の炎』

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全身の火傷を一瞬の時間で再生可能だとしても、燃え散った衣服の再生など、そのような異能は存在しない。 目の前にいる女は……果たして人なのかと――。 もし、私は人間の皮を被った化け物だと告げられたのならば、例えそれが虚言であったとしても、今だけは信じてしまっても不思議ではない。 「俺を倒せる奴なんてこの世に誰もいない。俺が最強である以上、他者を寄せ付けない圧倒的な力を持っている以上、俺は自分を『化け物』か何かかと考えていた事もあった。だが、今はっきりと違うと断言出来る」 振り翳した《インフェルノ》の剣先が、エレンの方へ向けられる。 「感謝するぜ、〝化け物〟さん。アンタの存在が、これから俺がどんな道へ進もうが、どこまで常識外れの力を発揮しようが、俺の本質はそこらにいる人間と何も変わらない事が証明される」 優越に浸る気分が押し寄せてくるも、クロノはそれを抑え込んだ。 目の前にいる〝化け物〟が、クロノの言葉を耳にした途端、その真紅の瞳が悲壮に彩られていたからだ。 しかし、それも一瞬の事で、再び狂気に満ちた嗜虐の瞳を以て、エレンは発言する。 「ならばどうする? 貴様が私の存在を必要不可欠と宣言するのならば、私を逃がすか? 貴様の私利私欲の為に」 「ハッ! 馬鹿を抜かすな。最強の名をここで終わらすほど、俺も無責任じゃないんでね。俺を最強と崇め称える馬鹿な民衆の為、俺の名誉の為、そして俺自身の為に、この無名の土地は、今から貴様の墓場となる」
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