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「《電神の鉄槌》と比べるのはさすがに失礼というものだぞ。だがまあ、悪い気はしないがね」
不敵の笑みを浮かべたエレンが、おもむろに左腕を上空へと伸ばした。
そこに見えざる物体か何かを掴むように手の平を真上にしている。
「時間を浪費し過ぎた。早々に決着を付けさせてもらうぞ」
漆黒の空には未知なる巨大生物が生息しているのか、蠢く黒雲が唸りを上げる。
雷鳴の咆哮が大気を震撼させた。
広がる雲の内部を駆ける無数の紫電が一点に集束すると、再び地上へ蹂躙の暴威を振るい出したのだ。
が、稲妻は地面を蹂躙するのではなく、主の命に忠実に従う猛犬と化した。
エレンが上空へ差し伸ばした左手は、それこそ避雷針の役目であるかのように稲妻を導いたのだ。
エレンの左手に落ちた稲妻は轟音と共に大地を揺るがして、昼と見間違えるほどの閃光を放ち――
「っ!?」
そして、眩い世界が、徐々に元の暗黒へと戻り始め、クロノの視界も回復の兆しを見せたその時、
「な……」
彼は、呼吸をする事を忘れてしまっていた。
「そ、んな……」
上空にいるリンさえも、思考を停止せざるを得ない状況に至っていた。
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