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俺は敢えて気にしない素振りを見せ、笑って返す。
「ただ討伐隊として行くだけだよ。別に本格的な戦闘になる訳じゃない。簡単な任務だ」
「命の奪い合いを『簡単』なんて言葉で言い包めたらダメ。もし流れ弾が貴方に当たったらどうするの?」
俺が身に纏っている甲冑は銃弾すら弾く程の硬度だが、頭に当たったらどうするのか、と心配してくれているのだろう。
「そんな馬鹿な死に方したら、俺達の存在価値そのものに意味がなくなってしまうだろう。『物理的な攻撃で俺達が死ぬ筈がない』んだからさ」
だが、俺の言葉が気に食わなかったのか、それとも単に呆れただけなのか、俺に向けられる彼女の視線がとても冷たい。
「そういう言葉を言う人ほど、すぐに死んじゃうんだよねぇ」
「遠くを見つめながら呟くの止めてもらえないか? さり気なく怖い」
毎度毎度の事だが、彼女には振り回されっぱなしの自分も、懲りない性格なのだなと思ってしまう。
そして今も、俺が反応に困っている姿を見て、耐えきれなくなって吹き出す始末だ。
「ふふっ、これも冗談」
「うぉい……」
「あっ、それよりもいいの?」
「何が?」
「このままここにいて大丈夫? あの人、ずっと探し回ってるよ」
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