僕が彼女を殺した理由

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亜季は言葉の勢いに乗せて圭一郎の両肩を掴み揺さぶった。 「・・やってない。んんっ。僕は何もしていない」 ようやく搾り出した声は、最初の方がかすれてしまう。咳払い一つ落として、仕切り直した。 「てめぇ!嘘つくなよな!」 亜季は圭一郎を壁に叩きつける、ドンとこもった音。同時にパチンと何か落ちた音もした。 しかし、少し離れたミカはおろか、完全に血が上っている亜季や目を伏せた圭一郎ですら気づいていない。 「亜季!!」 一触即発な空気にミカの高い声が廊下に響いた。その声はまるでやめてと叫んでるようにも聞こえた。 ミカは亜季がこれぼどまで怒った姿は見たことがない。それゆえこの後どうなってしまうのか想像できない不安が叫び声になった。 その叫びに答えるように亜季は少し体制を崩した。それでもしっかりと両手は圭一郎を放さない。そのためすり足になる。ミカに振り返ろうとしたのだ。 カチン、ツゥゥー。 その足に当たり滑る物、3人の視点が集まる。
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