僕が彼女を殺した理由

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それは赤いシャープペン。真っ赤ではあるが、ところどころ可愛いデザインのキャラクターが施されている。 親友の声ですら放さなかった手。その手は静かにペンを拾い上げていた。驚きを隠せないのか、声が少し振えている。 「これ・・」 圭一郎は亜季が拾い上げたペンを見て硬直してしまう。締め上げられていた時よりきつい顔になった、まるで金縛りにあったように。 「それ・・」 何時も胸ポケットにあるはずのペンを探してみる。落ちたんだと認めたくない手は文字通り空回りする。 想いを告げるなど、考えるだけで逆に沈んでゆく不思議な気持ち。一方でその姿を見かけると弾む気持ち。 なんだろうこの気持ちは、恋とはこんなにも疲れるものなのか、成就するまででもこれほど苦しいのなら、その後、始まればどれほどになってしまうのか、まして、失恋なら計り知れない。 それでも押し殺す事はできない気持ち。それほど簡単でもない。なら、せめて今はお揃いの物だけでいい。圭一郎なりに出した答えの形、それがその赤いシャープペン。
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