0・彼氏は上様

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0・彼氏は上様

ようこそ、おいでくださいました。 茶坊主の董沢と申します。 トウタクと、どうぞお呼び捨て下さいませ。 この奥川幕府の重都(エド)城で、お客様をおもてなしする茶道をたしなむ者でございます。 出家しているわけじゃ、ございませんよ? さて…。 この重都城に日々大勢いらっしゃるお客様の内密な情報は、私ども茶坊主が知り尽くしておりますよ? ──で、おいくら頂けるので? …は? ご存知ない…? これはこれは…。 政略渦巻くこの重都城で生き抜くには、私ども茶坊主の情報は必要不可欠でございますものを…。 頂いたお金の額によって、いろいろな情報を差し上げますよ? ……………。 ……では、こんなお話はいかがでしょうか? 実は、ただ今の上様ですがね…? 大きな声じゃ言えませんがね…? 実の甥御さまを愛でられておいでで、他に正室も側室のお一人もお迎えにならず、男色に耽っておいでなんですよ…?
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