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どれだけ歩き続けただろう…
俺はついに住み慣れた母国を離れ、目的の国の国境線へと来ていた。
「…これが国境になるわけか。結構でかいな。」
目の前に流れる大河ルクセール川を越えれば、ついに目的地であるリドルギア帝国の領地だ。
俺が感慨深く浸っていると俺の隣にいる奴がぐっと背伸びをした。
「ようやくじゃな!早くワシの竜玉を取り戻さなければいけないからのう!」
この古風なしゃべり方をする奴の名前はレムリア。
俺がこの面倒臭い旅をしなければならなくなった原因である。
実はこのレムリアは、この世界ルティキオでは神聖な生き物として崇められるドラゴンだ。
…しかし、今、俺の横にいるのはただの朱髪の女。
黒のインナーに革の胸当て、白い腰巻きに革製の編上げ靴を履き、肩やお腹、太ももを露出させており、少々見る方も恥ずかしい格好をしている。
とてもあの威厳漂うドラゴンには見えない…
しかしこれには理由があった。
それは、レムリアの持つ竜玉が盗まれてしまった為、レムリアのドラゴンとしての力が出せなくなり、人化したまま元の姿に戻れなくなってしまったからだった。
厳密に言えば戻れなくもないが、長時間は維持できないし、強力な力を使用すれば命にも関わってくるという話だ。
…つまりこの旅はレムリアの竜玉を取り戻す為の旅というわけだ。
(…まあ……この竜玉に関しては俺も無関係じゃないけど……)
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