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暫くの沈黙。 まるで時間が止まったかのように、誰も言わない。誰も動かない。 今にも殺したいと願っているはずの由佳でさえ、まるで時を待っているかのように微動だにしない。 そんな中、口を開いたのは秋斗だった。 「仮に、その由佳って奴に、憎しみがあったとする」 「え?」 「積もりに積もった憎しみは、ある弾みで実体化するんだ。 その思念を俺達は、陰と呼ぶ。 陰は実体化するが、それはまだ完全ではないんだ。 完全になるためには、主人の体を殺し、自分に取り入れるしかない。 けど、そのまま゙この世界"の方で殺すのはなかなか難しい。 さっきも言ったけど、完全体じゃないからね。 だから、陰に有利な゙己の世界"に主人を引き込み、殺す。 で、完全体を手に入れた陰は、憎んだ奴を殺しに動くんだ」
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