プロローグ

3/4
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/120ページ
ああ、そうかと、美由紀は考える。知ったのだ。 別に由佳を嫌ったわけではなかったのだと。 恨みなんてない。憎しみなんて一つとしてなかった。 彼女は、美由紀の楽しみだった。 逃げ道だった。 彼女をいじめる時の高揚感。美由紀はきっと、酔っていた。 だから、全て嘘だった。 彼女に投げる言葉全て、嘘だった。 きっと、同じクラスになってなければ、こんなことにはならなかった。 だから美由紀はクラスを憎んだ。 こんなことにした、学校を憎んだ。 運命を、憎んだ。 だが、少年は言う。 もう手遅れだと。 美由紀は涙で霞む視界の中、数メートル先にいる黒く染まった由佳を見た。 心を殺された少女は無表情。 無口のまま、美由紀を睨む。 暗やみに染められた彼女は、死んだのだ。 「私は…」 溢れだす後悔、恐怖。 美由紀は既に承知していた。 由佳が、美由紀を殺したくて仕方がないことを。 だから言えなかった。 ごめんと。 ごめんなさいと。 一人で、死んでくれと。 代わりに言う。
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!