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ああ、そうかと、美由紀は考える。知ったのだ。
別に由佳を嫌ったわけではなかったのだと。
恨みなんてない。憎しみなんて一つとしてなかった。
彼女は、美由紀の楽しみだった。
逃げ道だった。
彼女をいじめる時の高揚感。美由紀はきっと、酔っていた。
だから、全て嘘だった。
彼女に投げる言葉全て、嘘だった。
きっと、同じクラスになってなければ、こんなことにはならなかった。
だから美由紀はクラスを憎んだ。
こんなことにした、学校を憎んだ。
運命を、憎んだ。
だが、少年は言う。
もう手遅れだと。
美由紀は涙で霞む視界の中、数メートル先にいる黒く染まった由佳を見た。
心を殺された少女は無表情。
無口のまま、美由紀を睨む。
暗やみに染められた彼女は、死んだのだ。
「私は…」
溢れだす後悔、恐怖。
美由紀は既に承知していた。
由佳が、美由紀を殺したくて仕方がないことを。
だから言えなかった。
ごめんと。
ごめんなさいと。
一人で、死んでくれと。
代わりに言う。
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