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が、そんなこと信じられる程、美由紀の思考は柔軟ではなかった。
否、たとえどんなに柔軟に考えることができる人でも、信じ難いだろう。
実体化した心だなんて。
心に連れ込まれるだなんて。
心に、殺されるだなんて。
非現実的過ぎるを通り越し、もはや夢にも見れない世界。
それ以前に、理解不能な世界設定。
それが、目の前で起きてるだなんて。
だから、美由紀にはどの道選択肢はなかった。
だって、まだ首元に痛みを感じる。
黒く、まるで影のような由佳に絞められた跡。
少年が来る直前だった。
一人彷徨った美由紀は由佳を見付け、しかし黒く染まった彼女に違和感を覚える。
そして、伸ばされたその腕は、美由紀の首に触れたのだ。
激しく。
由佳は、殺すと叫んでいた。美由紀が、憎いと。
感じる鋭い痛み。
激しい悲しみ、恐怖。
リアリティーある世界。
恐らく、これは現実であるということ。
だからこそ、信じたくはなかった。
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