Opening

2/2
21人が本棚に入れています
本棚に追加
/75ページ
「どうして……?」 ポツリと呟かれた言葉は誰の耳に届く事もなく空に消えてゆく。 荒れた地に累々と横たわる死体の間を覚束無い足取りで進むのは、まだ幼さの抜けない綺麗な顔立ちの少年だった。 普段なら屈託ない感情のままに明るい紫紺に輝く瞳は、絶望と悲哀に陰っている。 目の前に広がる惨劇が理解出来ない。 これを為したのが彼だと信じたくない。 けれど、あちこちに残る魔力の残滓が真実だと伝えていた。 為したのは、彼。力を求め、自分の為に。 ………安らぎを求め、<わたし>の為に。 少年の頬を、一筋の光が滑り落ちた。 .
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!