13人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
運命
「どうしよう。」
今日、玲二は昨日の夜に貸して貰った金を返そうと、早めに通勤し、バーによってみた。
しかし、昨夜金を貸したあの男がバーの店員では無いことをマスターから聞いてひどく驚いた。
また、マスターが言うにあの男は周一通いの常連では無いらしく、返そうにも返せない状況になってしまった。
「返せないのも問題だけど、何で見ず知らずの俺に金なんか貸してくれたんだろう・・・・」
俺は疑問に思いつつも目の前にある仕事を黙々と続けた。
今日の俺を二日酔いにさせた原因である仕事のミスは部長のミスであった事が今朝わかった。安堵しているものの、大きな仕事だったので部長も首が危ないとされ、こちらが悪い訳では無いのだが、いたたまれない気持ちになった。
二週間後、案の定、部長は他の科に移され、ほかの姉妹会社から新しい上司が配属された。
今日はその上司の御披露目会(値踏みは、女子社員限定)が行われる予定だ。
間もなくしてその時がきた。
「新しくこの科に配属された千賀誠です。よろしくお願いします」
いきなりの移動だが、ポジションは高く、普通なら少々鼻につく態度が見受けられてもおかしくないはずなのに、彼は折り目正しく挨拶をした。
女子社員にも好印象だったらしく、頬を染めて羨望の眼差しを彼に向けていた。
しかし、なぜか玲二には違和感が残った。
(この顔、どこかで・・・・)
「あっ!!」
ふいに大きな声が出てしまった。周りは、新しい上司への評価でいそがしいらしく自分の声は聞こえていなかったが、彼には聞こえてたらしく自分の方を見て、やんわりと微笑んだ。
その瞬間キュンと心臓が掴まれるような感覚に陥った。
彼はあの時の・・・・それに今のはなんだったんだ?
玲二には、自分では何だかわからない感覚だけが残った。
最初のコメントを投稿しよう!