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「‥ニコ」
ロントはニコに向き直り、特に申し訳なさそうな顔をしながら拳を握り締めた。
ニコはそんな彼に優しく微笑み、彼の手を取る。
「ロント、そんな顔しないで?」
「…結婚式上げる約束、守れなかったな…」
「私はロントと出会えたこの世界を守れた事が、一番の贈り物。悔いはない…」
「‥そうか…」
ロント達の体が一際強く輝く。
「‥皆、元気でな…」
ロント達の体は光と共に消え去り、後に残った石も何処かへと飛んでいった。
その場に残ったのは、黒く、光を失い欠けた巨大な水晶と、一本の刀だけだった。
『かぁ‥、さん…』
水晶からは光が消えた直前、か細い聞こえたが、それを聞く者は居ず、声は闇へ吸い込まれていった。
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「うぁ!!」
先程とはまるで違うとある場所の寝室で、一人の青年が目を覚ました。
枕元ではラジオが音を立てている。
『ゴット王国立ラジオ局が、午前の卯の時間のニュースをお伝えします。
世界暦3533年、卯月の24日の本日、王国立歴史博物館は世界史に残る程の展示品を公開すると言う事で、王国各地から取材が殺到すると予想されます。
では次に本日のてん、ブッ!』
青年はラジオを止め、部屋のカーテンを開けた。まだ夜から明けきっていない空は青とも紫とも言えない、不思議な色をしている。
「また、あの夢か‥」
青年は長く腰まで伸びた髪を掻き上げながら、空を見上げた。
「今日は晴れだな」
彼は知らなかった。
知るよしも無かった。
今日という日が、自分の人生を大きく変える事になる事を…
『世界を守護する者達』
著者:335遼一
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