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「今日も仕事かい?」
「はい。九時入りです」
「折角の誕生日位、のんびりしたらどうだ?」
「いやいや。貧乏暇無しです。それに今日はかなり大事な仕事ですから」
ジンはリモコンでチャンネル変えていき、ニュース番組で手を止めた。
『…と言う訳で、今日は博物館前が報道陣と野次馬でごった返しています。
今回公開されるのは、国立遺跡発掘部隊隊長の『故、ジェネス夫妻』が最後に発見した石盤との事です。
ジェネス夫妻は、この石盤を発掘した一年後に謎の崩落事故で亡くなられた事から、当初は『呪われた石盤』と言われてきましたが…』
ジンの顔は少し曇った。
伯父もそれに気付いたらしく、話を逸らそうとする。
しかし、ジンは「大丈夫です」と答えた。
「…記憶はまだ戻らないのか?」
「はい‥。父さんと母さんと過ごした記憶もありません。思い出せるのは、事故現場から伯父さんに助けられた所までです…」
ジンには三年前からまでの記憶しか無く、それ以前に何があったかは何も思い出せていない。
周りの大人達は「ショックが原因」と言うが、やはり思い出せない事には、たまに歯痒さを感じている。
ジンは着ていた服の胸ポケットから、少し色褪せた写真を取り出した。
そこには、今は居ない両親と、恐らく15歳位の自分が発掘現場であろう朽ち果てた城を背景に映っている。
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