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再び触手の及ぶ範囲に足を踏み入れた。
正直、怖い。
天使の歌の防御がない今、一発でも触手に当たれば間違いなく死ぬ。
触手によって抉られた地面は走りにくいし、バランスを取るのが難しい。
今回は触手の連携はないようだが、それでも無差別に暴れまわる触手は脅威に変わりない。
自分でもバカなことをしていると理解している。
「バカかオレは」
だが、今さら自分の行動を悔いても仕方がない。
やるからには徹底的にやってやる。
意地でも助けてやる。
残った魔力を全て肉体強化に回し、触手の隙間を掻い潜りながら一気に加速する。
「──っ!」
おそらくは偶然。
三本もの触手が同時にオレに遅いかかってきた。
一つは右から、一つは正面から、一つは真上から。
どこにも逃げ場がないと判断するのに、そう時間はかからない。
だが、後退する気はない。
「──っあぁ!」
触手が通らない場所を勘で目測し、そこに飛び込む。
正面からの触手がすぐ真下を通過し、上からの触手がすぐ左を通過し、右からの触手が、左足を僅かにかすって、通過した。
「っ~あぁああ!」
それだけでもとんでもない威力だった。
ほんの少し、左足の脛をかすったが、そこが抉りとられるようになくなり、血が流れた。
しかし幸いなことに、傷は深くない。
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