第十一章─反転─

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「あたしには……そんなのもう必要ないんだよ!」 月乃が立ち上がり、一層凶悪さを増した触手をオレに向けた。 近寄るな、と言わんばかりに牽制している。 それでもオレは構わずにもう一度走り出した。 「っ!」 同時に触手はオレに襲いかかった。 オレという明確な標的ができた今、もう近づくことは不可能に近い……のだが。 「なんだよ? そんなんじゃすぐにまた捕まえちまうぞ!」 触手の動きはあまりに粗末。 オレが言うのもなんだけど、迷いだらけだ。 「う……わ……ああ」 月乃は顔を両手で覆い、空を仰ぐように体を仰け反らせた。 「ああああああぁぁぁぁぁ!」 全ての触手がオレを囲いこむように一斉に向けられた。 それがいくら迷いだらけで隙間だらけの攻撃でも、数でこられると避けることはさすがに難しい。 いいさ。無傷で済むなんて端から思っちゃいない。 「ったく。この問題児が」 しかし、その触手は黒い一閃によって一瞬で消し去られてしまった。 「……え?」 隣にはいつの間にか黒い剣を持った要さんがいた。 タバコをくわえ、呆れたように言った。 「ま、だから教育し甲斐があるってもんか」 「要……さん」 要さんはぶっきらぼうに親指を月乃に向け、顔を振った。 「男ならやると決めたことは死ぬ気でやり抜いてこい」 「は……はい! ありが──」 「礼なんざいらねぇ。さっさと行け!」 「はい!」 これが最後だと覚悟し、体の中のリミッターを引き抜いた。
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