第十一章─反転─

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触手は再生を始めている。 もう触手は怖くない。 後ろに要さんがいると思うだけで、この上なく心強い。 だがやはり、要さんも相当辛いはずだ。 月乃を止めるのだとすればこれが最後のチャンスだ。 「バカ野郎!」 オレは敢えて血塗れの右手で拳を作った。 それだけでも激痛が走り、意識が飛びそうになる。 「オレを友達だって言ったのは、テメェじゃなかったのかよ!」 「…………っ!」 月乃は逃げるように後ずさる。 それがなんとなく気に食わず、叫ぶ。 「逃げんなぁ!」 「ひっ!」 月乃の肩が跳ね、動きを止めた。 その隙に一気に距離を詰め、もう一度光の中に飛び込む。 また見えない力がオレを吹き飛ばそうとぶつかってきたが、構わずに地面を踏みしめる。 「落ち込むな。悲しむななんてオレには言えねぇ! だけど絶望するな! 何もないなんて言うな!」 右手で作った拳を、容赦なく全力で月乃の頬に叩きつけた。 「は……っ!」 月乃は軽く吹っ飛び、地面を滑る。 それと同時に光と触手が消えた。 肘から先が千切れてしまいそうな錯覚を振り払い、倒れている月乃の胸ぐらを掴み、無理やり顔を上げさせた。 「答えろ月乃。……オレは……オレ達は……お前のなんなんだ……?」 泣き出しそうな虚ろな顔にその言葉を叩きつけたのを最後にし、右腕の痛みが意識を刈り取った。
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