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触手は再生を始めている。
もう触手は怖くない。
後ろに要さんがいると思うだけで、この上なく心強い。
だがやはり、要さんも相当辛いはずだ。
月乃を止めるのだとすればこれが最後のチャンスだ。
「バカ野郎!」
オレは敢えて血塗れの右手で拳を作った。
それだけでも激痛が走り、意識が飛びそうになる。
「オレを友達だって言ったのは、テメェじゃなかったのかよ!」
「…………っ!」
月乃は逃げるように後ずさる。
それがなんとなく気に食わず、叫ぶ。
「逃げんなぁ!」
「ひっ!」
月乃の肩が跳ね、動きを止めた。
その隙に一気に距離を詰め、もう一度光の中に飛び込む。
また見えない力がオレを吹き飛ばそうとぶつかってきたが、構わずに地面を踏みしめる。
「落ち込むな。悲しむななんてオレには言えねぇ!
だけど絶望するな!
何もないなんて言うな!」
右手で作った拳を、容赦なく全力で月乃の頬に叩きつけた。
「は……っ!」
月乃は軽く吹っ飛び、地面を滑る。
それと同時に光と触手が消えた。
肘から先が千切れてしまいそうな錯覚を振り払い、倒れている月乃の胸ぐらを掴み、無理やり顔を上げさせた。
「答えろ月乃。……オレは……オレ達は……お前のなんなんだ……?」
泣き出しそうな虚ろな顔にその言葉を叩きつけたのを最後にし、右腕の痛みが意識を刈り取った。
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