第十二章─新しい何か─

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「げ、財布持ってなかった」 自販機の前に立つまでそのことを忘れていたオレ。 あの時はポケットにケータイと財布は入れていたはずだから病室のどこかにはあるんだろうけど、探すのだるい。 ナースステーションとかで水くらい出してくれねぇかな? 「無理か。さすがに」 壁にかかっている時計は五時半を指している。 少し待てば飯は出てくるだろう。 「見つけたぁ!」 耳をつんざく叫び声。 病院では静かにしろと習わなかったのか? 「って、結城?」 とその他のいつものメンバー。 「……何?」 「何? じゃなくて、病室からいなくなってるからちょっとしたすげぇ騒ぎになってたんだぞ?」 ちょっとしたなのかすげぇなのか、どちらかに統一してほしい。 「あいよ。すぐに戻る」 つーか、何でいるんだ? 面会謝絶の札があったのに。 ……あんま意味なさそう。 「とりあえずさ、部屋で話そうぜ。聞きたいこと色々あるからさ」 「任せろ。語るぜ~。語りまくっちまうぜ~!」 なぜか首をゴキゴキと鳴らす結城にひとまず言っておく。 「結城はジュースな。もちろんおごりで」 「……はい?」 「あ、あたしコーラ!」 「コーヒー。微糖で」 「私は紅茶を」「ミネラルウォーターで」 「オレアイス」 「オレがおごるのはすでに決定事項スか!? で海斗は売店行け!」
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