第十二章─新しい何か─

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「はぁ」 結城達が病室を出た後、オレは溜め息を溢しながら何気なく窓の外に目をやった。 日はだいぶ傾き、辺りは暗くなってきている。 夕日の具合から、今日は快晴だったんだろうな、とどうでもいいことを考えてみる。 視線を右手に移す。 ギプスをしてはいるが、骨折はしていないはずだ。 それでも固定しなくてはいけないほどの傷だったのだろう。 あれだけの傷で、腕としての形が無事に残っていることは奇跡なんじゃないだろうか。 「……どうでもいい」 頭を振り、もう一度ベッドから降りた。 じっとしていたら色々と考えてしまい、その内自分がやったことに後悔すらしてしまいそうだ。 それだけはどうしても避けたい。 自分で自分を否定したくはない。 「屋上にでも行ってみるか」 とにかく体を動かしたい。 行き先なんてどこでもよかったが、ごちゃごちゃになっている頭を冷やすのなら屋上で風に当たるのがいいだろう。 そう考え、オレは屋上を目指して病室を出た。
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