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「うわあああっ!?」
少年は、ベッドの上で思わぬ叫びをあげながら飛び起きた。
「はぁ…はぁ…」
うなされていたのか、息が荒く、汗をかいていた。
しかし、回りを見渡してここがいつもの自分の部屋だという事を確認して安心する。
「…なんだ、夢か…」
落ち着きを取り戻し、一度深呼吸して息を整える。
時計を見ると、朝の7時を回っていた。
いつもなら6時頃に起きているのだが、うなされていたにも関わらず遅く起きてしまったようだ。
というのも、今日からGW。
高校2年生である彼は、今日から連休にありつけるのである。
ベッドから降りて、寝汗で若干湿ったシャツを着替えようとした時、ドアをノックする音がした。
「勇輝~、起きた~?」
この家に住む幼馴染である女性の声が、ドアの向こうから聞こえてきた。
少年、『焔 勇輝(ホムラ ユウキ)』は、すぐに返事を返す。
「ああ…今起きたとこ」
「ふうん…。じゃ、入るね」
「え、ちょ…」
着替え中だ、と拒否する間も与えられずにドアが開き、部屋に幼馴染が入ってくる。
勇輝はシャツに掛けていた手を離していた。
「おはよう、勇輝!」
「お、おう、おはよ…」
悪夢にうなされたせいで少しテンションの低い勇輝とは真逆の、元気な挨拶が飛んでくる。
「有紗…なんか元気だな?」
「当たり前でしょ。GWなんだから」
幼馴染、『風雷 有紗(フウライ アリサ)』とのテンションの差に、勇輝は付いていけていなかった。
「朝ごはん出来たって」
「わかった。着替えたらすぐ行くよ」
「うん」
有紗はそう聞くとすぐに部屋を出て行った。
………
……
…
勇輝は着替えを済ませ、1階に下りて食卓を囲むリビングに向かい、一度洗面所に行って顔を洗う。
そうしてからリビングに戻り、席に着いた。
彼の隣には有紗、そして向かいに座る有紗の両親。
勇輝はとある事情により、居候という形でこの家に住んでいる。
この家の、いつも通りの朝。
いただきますという言葉が揃って響き、箸に手をつけた。
「ねえ勇輝」
「ん?」
その直後、有紗が勇輝に話し掛けて来た。
「ごはん食べ終わったら、どこか出掛けない?」
GW初日で、天気も良好。
絶好のお出かけ日和といえる。
有紗がこうして誘ってくる可能性があると、勇輝は昨夜から考えていた。
昨夜の時点では出かけるのも吝かではなかったのだが。
「…出掛けるには早すぎないか? 店はどこも開いてないだろ?」
「まぁ、そうだけど…」
しかし、勇輝は一緒に出かける気にはなれなかった。
きっと夢のせいだろう。
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