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朝食後、勇輝は有紗には内緒で、有紗の両親だけに伝えてこっそり家を出た。
家に居ても気分は晴れないと考え、気晴らしに1人で散歩に出かけることにしたのだ。
「ホントに、良い天気だ」
ただの散歩でもいい事がありそうな気がする。
少し気分が持ち上がった勇輝は、住宅地を抜け、街中へと向かった。
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一方…
「…お父さん、勇輝が見当たらないんだけど、知らない?」
勇輝をもう一度遊びに誘おうとしたのだが見当たらず、知ってるかもしれない父に話を聞く有紗。
「勇輝なら、さっきこっそりと出掛けたよ」
「ええ!? なんでよ!」
そう聞いた有紗は、すぐに家を飛び出していた。
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勇輝は、歩きながら夢の事を考えていた。
黒い鎧を身に付けた自分の姿…。
印象に残ってしまい、思い出そうとしたらすぐにでも思い出せた。
「お~い、焔~!」
「…ん?」
道路の反対側から、勇輝を呼ぶ声が聞こえてきた。
勇輝はその声に反応してその方を見る。
「悟…」
勇輝に声を掛けて来たのは、高校のクラスメートであり、友達でもある『海藤 悟(カイドウ サトル)』だ。
その他2名のクラスメートと出掛けているようだった。
「お前も俺たちと一緒に来るか~?」
せっかくの誘いの言葉だが、今は考え事で遊びにも集中できないような気がした。
「いや、今ちょっと忙しいんだ~」
「そうか~。それじゃあな~」
道路を挟んで距離があるので大振りで言葉を交わし、別れた。
「(ま、GWなんだし、いくらでも遊びに行けるだろ)」
埋め合わせの予定が出来たなと思いながら、交差点に差し掛かる。
その時だった
「うわあああああ!?」
「きゃぁぁぁああ!?」
「なんだあれ!? 」
「逃げろ!」
建物の陰から複数の叫び声が聞こえて来た。
「ん?」
交差点を曲がってすぐの所だ。
勇輝は何があったのか気になり、走って交差点を曲がる。
何人かの逃げ惑う人々とすれ違い、その向こうに異質なものを見た。
「ば…化け物!?」
それは明らかに、この街中で見るような生物ではなかった。
茶色く毛深い、熊のような生物。
しかし熊にしては、腕は分厚く剛腕で、人間のように直立で二足歩行をしていた。
そんな異様な生物など、化け物と呼ぶ以外に当てはまらなかった。
「しかも、でかい…!」
推定、2m30cm。
普通の熊でさえどうしょうもないというのに、化け物など人間が立ち向かえるものじゃない。
勇輝は振り返り、その場から離れようとする。
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