犬の話

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不意に、腹の下に温かいものが触れた。それから、僕の身体を――濡れているけど――温かいものが包んだ。 その行動が何なのか、理解できなかった。気づいたら足は地についていなかった。 子供が細い手で、僕を持ち上げていた。 何すんだよ。放してよ。 『お前は………僕と同じだ』 もがこうとしたけど、その子供の心が、僕の心に流れ込んできて、もがくのを止めた。 ………同じ?同じってなんだよ? 『びょういんへ………連れて行かなくちゃ…』 病院へ?僕を? 傘と僕を持ったまま、子供が走り始めた。 え?お前、馬鹿か? だって病院なんか、ここら辺にないぞ?くるまじゃないと行けないって。 そもそも場所知ってるの? なんで走るのさ。 黄色い長靴が、水溜まりを割いていく。 『お前は、愛して欲しくて、愛してるって言って欲しいのに、言えなくて、人が嫌いになったんだろ?』 え、ごめん、意味分からない。 違う。人間なんて嫌いだ。 愛して欲しくなどない。 違う。違う…………。 『僕と同じだ……助けたい』
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