亡夢の影

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 ミカゲと違い、どうにもヒナタは大人を相手にするのが苦手で、更に人酔いすることもあり、話が出来ない。  だから、こういう時はミカゲがヒナタのふりをして挨拶してまわる。  本当は嫌なはずなのに、いつもミカゲは拒否せずに引き受けてくれる。  それが少し嬉しくて、でも苦しいと思う。  やっぱりミカゲは、ヒナタに付き合わされてばかりなのだ。  ホールから目を離し、ヒナタは視線をさ迷わせる。  どんどん下降していくヒナタの思考をどうにか引き上げたのは、とても衝撃的な場面だった。 「っひゃああぁ……」  ちょっと腰を低くすると、テラスに立つ二人の姿がガラス越しに見える。  百合姫がこちらに背を向けているが、やや上からその状態を眺めるヒナタ目線では梛の表情がかなりよく見えていた。  優しい表情。  大切そうに百合姫の腰を片手で引き寄せ、もう一方の手で後頭を優しく支える。  普段は無愛想というか、あまり笑わない……むしろ凄んだりしてる印象ばかり持つヒナタからしたら、とても意外な情景だった。
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