188人が本棚に入れています
本棚に追加
「別に、隠すことでも無いだろうに。こちらだって気付いてはいるのだから」
ミカゲは静かに呟いて、踵を返して何処かへ歩き出す。
その瞳が何か寂しげに見えた気がして、ヒナタは慌ててミカゲを追った。
「ミカゲ、あのね、違うの。隠すとかじゃなくて、単に言いにくかっただけで……っ!」
ミカゲはぴたと立ち止まり、ヒナタは彼の頭に鼻を強かにぶつける。
鼻を押さえてヒナタは彼の様子を窺う。
ミカゲは肩越しに振り返り、小さく苦笑した。
「そんなの、分かってる」
滅多に見れない、ミカゲの笑った顔にヒナタは瞠目して、飛び付くように彼の肩に抱き着く。
「痛い、重い、しんどい」
「あのね、ミカゲ」
ミカゲのぼやきを無視し、ヒナタは小さく語りかける。
「私はね、ただ、幸せになって欲しいなって。思ったよ」
ミカゲは無表情のままそれを聞いて、肩にぶらさがったヒナタをずるずる引きずり、「そう」とだけ呟いて控え室に向かって行った。
最初のコメントを投稿しよう!