亡夢の影

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「別に、隠すことでも無いだろうに。こちらだって気付いてはいるのだから」  ミカゲは静かに呟いて、踵を返して何処かへ歩き出す。  その瞳が何か寂しげに見えた気がして、ヒナタは慌ててミカゲを追った。 「ミカゲ、あのね、違うの。隠すとかじゃなくて、単に言いにくかっただけで……っ!」  ミカゲはぴたと立ち止まり、ヒナタは彼の頭に鼻を強かにぶつける。  鼻を押さえてヒナタは彼の様子を窺う。  ミカゲは肩越しに振り返り、小さく苦笑した。 「そんなの、分かってる」  滅多に見れない、ミカゲの笑った顔にヒナタは瞠目して、飛び付くように彼の肩に抱き着く。 「痛い、重い、しんどい」 「あのね、ミカゲ」  ミカゲのぼやきを無視し、ヒナタは小さく語りかける。 「私はね、ただ、幸せになって欲しいなって。思ったよ」  ミカゲは無表情のままそれを聞いて、肩にぶらさがったヒナタをずるずる引きずり、「そう」とだけ呟いて控え室に向かって行った。
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