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それぞれが、それぞれに想いを抱いて。
宵のパーティは、幕を閉じた。
百合姫と梛が付き合い始めたという話は、何故かあっという間に桃哉に伝わって、かと思えば既にクラスメートにも広まっていた。
「なんだか、幸せそうだね」
パーティ翌日の一時間目の授業が終わった休み時間、桃哉が百合姫の隣の席に腰を下ろしながらへにゃっと猫みたいに目を細める。
百合姫は一瞬ぎょっとして、引きつった笑みがを浮かべた。
ちなみに桃哉の席は教室の縦に六列ある座席の右真ん中一番後ろで、百合姫は窓際後ろから三番目だ。
つい最近席替えをしたのだが、百合姫が転校してきた時(百合姫と梛は隣)とあまり変わらず、梛は百合姫の真後ろの席だった。
今梛は、トイレにでも行ったのか不在だ。
だから桃哉が寄って来たのだろう──……何故か、普段梛と桃哉が直接関わることは滅多に無いのだ。
百合姫はやや恥じらいを含んだような表情で桃哉に訊く。
「あたし、なんか変な顔してるかなぁ」
「変っていうか、さ。自然と口許が緩んでるんだよ」
「え」
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