亡夢の影

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 頬をうにうにとマッサージして、百合姫は表情を引き締めようとする。  そんな彼女を桃哉は、無意識でそんな幸せそうな顔してたんだ、と微笑ましく思いながら眺めていた。  そうして、桃哉は思い出したように呟く。 「双子ちゃんね、協会本部に帰ったみたいだよ」 「え、早っ」  昨日ホールで会った時、ミカゲは一言もそんなことを言わなかった。  言ってくれなかったことに少し寂しさを感じていると、桃哉が百合姫の額を軽くつつく。 「急な仕事が入ったんだって、オレも今朝理事長に聞いたとこ。実の兄にさえも伝えられて無かったんだから、別に双子が姫ちゃんのこと好きじゃないとかじゃないよ」  百合姫は静かに瞠目する。 「う、なんで分かったの」  しかも実の兄・叶守でさえ聞かされてないって、どんな仕事だ。  桃哉は楽しそうに笑って、百合姫の紅い髪をくしゃくしゃと撫でる。 「結構分かりやすいよ」 「そうなの?」  うつ向く百合姫に、桃哉はにこにこと笑みを向けた。
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