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桃哉はにっこり笑い、オレの話はおしまいと言うように黙り込む。
けれど、まだ気になることがあった百合姫は口を開こうとして──……。
キーンコーン…………。
チャイムの音と、人差し指を立てた桃哉の手に阻まれる。
「この話は、おしまい」
なんだか強引な終わらせ方に百合姫は何か言いかけたが、微笑んでいるようで鋭い桃哉の視線に気圧されて仕方無く口をつぐむ。
自分の席に戻って行った桃哉は、何事も無かったように着席し授業の用意をする。
梛も何も言わず、百合姫は嘆息しながら前を向いた。
……気になったのだ。
女の子であるはずのヒナタから、男の子のミカゲが生まれたことが、どうしても。
百合姫の勝手な推測──本当に、何の根拠も無い推測を述べるなら。
ヒナタは、元々雌雄一体で生まれたのかもしれない。
名前も、「男子です」と言われれば通用する可能性のある名前のような気がする。
けれど、全ては百合姫の勝手な考えだ。
本当はもっと別の理由があるのかもしれないが、桃哉はその後も全く言ってくれなかった。
だから謎のままで、終わった。
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