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授業が終わって部屋に戻った夜中二時過ぎ、百合姫はばったりベッドに倒れ込むように寝る。
古典が、漢文が分からない。
頭が痛くなりそうだ。
明日は小テストなのに、とぐだぐだ悩んでいる百合姫は、程無くして誰かが入って来た音に振り返る。
「あ、梛か」
「俺以外で無言で部屋に入ってくる奴が他にいるか?」
いないね、と呟いた百合姫は、また脱力気味にベッドに伏せる。
その普段もしている行動の何処を不審に思ったのか、梛が百合姫のベッドに腰を下ろした。
「何か、あったのか」
「漢文の小テストが……」
「あぁ。なるほどな」
梛はくすりと笑って百合姫の紅髪を指先で弄ぶ。
髪に神経は通っていないはずなのに何故かくすぐったくなって、百合姫は少し頭を振った。
しかし止まらない梛の手に、百合姫は複雑な表情でちらと見る。
「梛」
「ん」
「くすぐったい」
「知ってる」
百合姫は口をヘの字に歪ませ、またベッドに伏せる。
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