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「分かっててやってるんだ。……いじわる」
「あ、そ」
素っ気ない梛の返答に音も無く嘆息して、百合姫は目を閉じる。
身体が重い。
先日の事件の疲れが今更出てきたような気がする。
事件解決直後に結構ぐっすり眠っていたのに。
(あぁ、でも、ダメかも)
意識がゆっくり薄れていく百合姫の隣で、梛は彼女の前髪を荒く撫でながら首を傾げる。
「どうした?」
黙り込んだ百合姫を不審に思い顔を覗き込むように体を前に屈めると、すぅすぅと寝息を立てそうな顔が見えて嘆息する。
男と(変な意味は無くても)一つのベッドにいるのに、全く警戒心が無い。
この無防備さは、今まで他人とろくな付き合いが無かった弊害だろうか。
やがて完全に寝入った百合姫を目の前に、無駄だと分かっていながらも梛は小さく呟いた。
「食っちまうぞ」
ん? という寝言を聞きながら百合姫の両脇に手をついた梛は、しかし何もせずに腰を上げた。
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