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「……お前の好きな奴が、俺の仲間なら何も心配はねェな。
それが綾の奴なら言うことなかったが……」
「……紅朱様?」
「万楼はまだまだガキっぽいところはあるが、芯は強いし、素直で可愛い奴だ」
「……えっと」
「蝉は……俺よりお前のほうがわかってるかもな。あれで真面目な奴だし、信頼できる」
「……あの」
「有砂は……まあ、色々あったが、今は落ち着いてるし、あいつも兄貴だけあって意外に面倒見はいいんだよな」
「……紅朱様」
「クセのある奴ばっかりだが、みんな俺の自慢の仲間だ。だから、お前が誰と一緒になっても俺は……」
「……紅朱様っ!!」
思わず大きな声で制してしまっていた。
そうでもしなければ延々と聞かされそうだったからだ。
紅朱のいささか的外れ過ぎる激励の言葉を。
日向子はふーっと一度呼吸すると、また紅朱が何か言い出す前に先に口を開いた。
「紅朱様は、大切なメンバーをお一方お忘れでいらっしゃいませんこと!?」
「は?」
「heliodorは5人でheliodorですのに……紅朱様は4人しか名前をお出しになっていないでしょう?」
言われた紅朱は、ぽかんとしていたが、今しがた自分が上げたメンバーの名前を反芻しながら、親指から順に左手の指を折っていく。
「……いや、合ってるだろ、綾と万楼と蝉と有砂……」
日向子は、最後に残った指……紅朱の左手の小指にそっと手を重ねる。
「もう1人はどなたでしたか……?」
紅朱は触れ合った手を凝視ながら、呟くように答えた。
「……お……俺??」
ようやく辿り着いた答えに、日向子は今更ながら少しはにかんだ笑みを見せた。
「……はい」
「違う」
「……はい?」
「違う。そんなわけねェ」
「???」
紅朱はまるで逃げるように、日向子の手から自らそれを逃がし、随分伸びてきたワンレングスの髪に突っ込んだ。
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