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泉のほとりに立つ木に登り、か細い足で力いっぱい枝を蹴る。しなった枝がララの体を跳ね上げる。ララは軽やかに宙を舞い、水面へと落ちていく。飛び散る水しぶき。泳ぎを知らない小さな子猫は無我夢中で手足をばたつかせ、見る間に沈んでいった。
ララが水の中に消えた後、姿を消していた月が現れ始めた。少しずつ、少しずつ、優しい月光が地上に降り注ぐ。やがて、森に真ん丸な月が帰ってきた。
けれども、ララは二度と戻ってこなかった。
◇◇◇
夕闇が迫る頃、草花の陰に潜む虫たちが古いわらべうたを口ずさむ。
子猫のララ。真っ白なララ。
泉に映る月の明かりをうっかり飲み込んだ。
急いで返しにきたのに、返し方がわからない。
だから、月と一緒になった。
今日もララは空の上から私たちを照らしてくれる。
夜が更けたら、よく見てごらん。
月に寄り添い微笑む子猫が見えるだろう。
end
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