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でもいつまでも佇むわけにもいかない。
涼花は勢いよく開けた玄関に飛び込み、そのまま階段を駆け上がった。
「りょうちゃんなの?おかえり」
掛けられた声に答えられない。
いつも答えずにいたが、今日は胸が痛んだ。
部屋に入ると鍵をかけた。
「りょうちゃーん?ご飯は?」
呼び掛けに耳を塞ぐ。
辿り着いた推測。
態度を改めなくてはならない相手はママで、前世で殺したかもしれない由美子ちゃん。
涼花は恐ろしい暗闇に引き摺りこまれていた。
パパの大きな暖かな手も、その話を聞いたら冷たく突き放すに違いない。
雪菜だって、冷たい視線を投げ掛けるだろう。
たった独り。
はじめて感じる孤独感は、涼花を震え上がらせていた。
ぼそぼそと話し声が聞こえてくる。
こんなときにもお腹は減るらしく、涼花は足音を忍ばせて階下に降りていた。
テーブルには冷えきったハンバーグと、伏せてある茶わんが仲良く並んでいた。
「と思うのよ。だから」
「ちょっと待てって」
珍しい。
パパの声が慌てている。
「まだ17にもならないんだぞ?ひとり暮らしさせるなんて無茶だ」
「…………こわいのよ」
「……またその話か、………いい加減にしてくれよ」
そっと部屋に近づいて、聞き耳を立てた。
《ひとり暮らし?こわい?……あたしが?》
ひんやりとした廊下に体育座りをすると、壁に寄り掛かった。
「……最近はあの子、私と目も合わせないのよ?」
「それは………まだ子供だからさ」
胸が痛んだ。
「もう少し大人になれば涼花も変わるよ」
どうやって?
何が変わるのだろうか。
由美子ちゃんの命を奪ったかもしれない。
そんな罪を抱えて、何を変えることが出来るのか。
パパの言葉が急速に軽くなっていくのを感じて、咄嗟に耳を塞いでいた。
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