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「償わなくちゃ罪の意識が消えないって、そう考えるとおかしいでしょう?」
何も言えなかった。
その通りだ。
「罪は帳消しにならないと思わない?償うことで消える罪悪感なら、服役した犯人が出所してまた罪を犯すことと同じ。でしょう?」
すっかり冷めてしまったミルクティーを、飲むように勧める香織の顔を見られない。
涼花が償いたいと思ったのは、あまりにも重い罪の意識から解放されたかったからだ。
由美子ちゃんが許してくれるかどうかも、考えてはいなかった。
さっきまで気持ちを理解してもらえないと憤慨したのは、彼女の為ではなく自分の為だった。
「どうしたらいいのかな」
「どうすべきかはもう伝えたはずよ?」
「違うの。あたしじゃなくて……」
香織は悲しそうな表情になると、軽く首を横にふってみせた。
「もうおしまい。過去は変えられないけど、未来なら変えられるわ。前世に捉われるのは、もうおしまい。いい?」
家には誰もいなかった。
ソファに座り深いため息をついた。
ママとの、関係。
ぎこちない空気は、良くはない親子関係のせいだ。
そして原因は自分にある。
なぜ嫌いなのだろう。
由美子ちゃんだったから?
わからない。
《繋や》を知るよりも、ずっと以前からの感情だ。
変えられるのだろうか。
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